【2022】建設コンサルタントの賃上げ表明

建設コンサルタントの年収 建設コンサルタントとは
建設コンサルタントの年収

毎年5月と云えばベースアップの春闘(春季闘争)です。賃金アップ交渉については、気になるイベントです。筆者も若いころは5月1日のメーデーに参加していましたね。最近は、ニュースにならないですね。
今年は、政府自ら賃金アップを後押しする政策として、賃金アップを表明した企業には、総合評価入札方式の業務案件において加点をすると表明しています。うらやましい。
八千代エンジニアリングは2月10日に社員一人当たりの給与などの平均時給額を3%以上引き上げると発表しています。
ということで、実際に賃上げ表明している建設コンサルタント会社がどこなのか、調べてみました。

政府主導の賃上げ政策とは

【制度導入経緯】
  令和3年11月の「新しい資本主義実現会議」の緊急提言や「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」において「公的部門における分配機能の強化」の一環として「政府調達の対象企業の賃上げを促進するため、賃上げを行う企業から優先的に調達を行う措置など政府調達の手法の見直しを検討する。」ことが位置づけられました。
 これを受け検討が進められ、令和3年12月17日に財務大臣から各省庁の長あてに賃上げ評価に関する仕組みが通知され、政府全体での本制度の内容が定められました。国土交通省においても令和3年12月24日に発注機関となる国土交通省内の各機関に対して通知を発出しております。
 この通知では、所定の書類(「法人事業概況説明書」や「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」)により賃上げ実績の確認を行うこととされ、当該書類で確認できない場合であっても、税理士又は公認会計士等の第三者により同等の賃上げ実績を確認することができると認められる書類に代えることができるとされたところですが、この実績確認の方法に関しては、様々な企業の実態を適切に評価できるのか等について、特に多くのご意見・ご質問をいただきました。
 これを踏まえて、賃上げ実績の確認については、賃上げを行う企業を評価するとの本制度の趣旨に沿った対応となるよう、具体的な確認書類の提出方法及び「同等の賃上げ実績」と認めることができる場合の考え方や例について、令和4年2月8日に財務省より通知が発出され、これに関する運用が明確になりました。

出典:国土交通省HPより https://www.mlit.go.jp/tec/tec_fr_000101.html

 平たく言えば、政府主導で賃上げをしていきますよ。その方法として、政府調達段階で賃上げを行う企業に受注しやすいようにしますよ。ということでしょうか。以下に、具体的に見ていきましょう。

 今年2022年4月以降に契約する公共工事やコンサルタント業務の入札で、賃上げを表明した企業を優遇する制度がスタートしています。「総合評価落札方式」(発注件数全体の約7割に相当)で、価格以外の要素も加味して評価するという制度です。価格以外の評価点として5~10%程度の加点をするというものです。

 大企業で3%以上、中小企業(資本金1億円以下の会社)で1.5%以上の賃上げを表明(国土交通省に賃上げ表明書を提出)すれば、総合評価落札方式の入札において加点されることになります。賃金は、前年度か前年の賃金と比較することになります。

 国土交通省は、企業が翌年に提出する税務書類をもとに本当に賃上げが行われたかをチェックすることになります。表明した賃上げ率に未達の場合は、その後1年間の入札で減点されることになります。入札時の加点よりも減点幅は大きくなるようになっています。
 今年度賃上げ表明をしたけれど賃上げが実行できなかった会社は、来年度の総合評価落札方式の受注はほとんど不可能に近いことになります。なので、企業は賃上げ表明に慎重にならなければならないと思うのですが、実態はどうなのでしょうか。
 適用期間としては、今年度と来年度のスケジュールが示されています。今年度3%以上上がり更に来年度も3%以上賃上げされれば、労働者としてはありがたい政策です。

対象業務

 国土交通省では、業務の難易度によりさまざまな入札方式を利用して調達しています。
 今回の制度が適用されるのは、「総合評価落札方式の業務」です。
 下表は、関東地方整備局の令和3年度の建設コンサルタント業務等の契約状況について集計された表です。
 対象となる業務は、赤枠で囲んだ総合評価落札方式の業務です。
・土木コンサルタントでは、業務件数で45.2%、契約金額で51.5%が対象業務です。
・発注者支援では、100%が対象業務となっています。
・測量では、業務件数で98.4%、契約金額で96.6%が対象業務です。
・地質では、業務件数で87.8%、契約金額で82.9%が対象業務です。

出典:国土交通省関東地方整備局HP 「令和4年度建設コンサルタント業務等の入札・契約、総合評価に関する説明資料」
https://www.ktr.mlit.go.jp/gijyutu/gijyutu00000061.html

 土木コンサルタント業務では、技術力を競うプロポ方式が多くなっているのが特徴です。
 上表は、関東地整の業種別・契約方式の割合ですが、他地整においても確認していませんが、変わらないのではないかと思います。

調査方法

 賃上げ表明しているか否かについて、各社のHPを見ても記載がありませんでした。では、実際に加点評価されているか否かを確認すればよいだろうと入札情報サービス(PPI)で調査しました。PPIには各社が提出した提案書を評価した各項目の技術評価点が公表されています。その例を下図に示します。
 業務名や各評価点については、このテーマ内容とは関係ないので伏せています。
 赤枠で囲んだ「賃上げの実施に関する評価」の列を見ていただければ、参加業者が賃上げを表明していることが分かります。
 また、隣の列には「賃上げ基準に達していない場合等(減点)」という項目があります。来年度の調達案件で賃上げが実行できているかチェックされてできていなければ減点対象ということになります。
 今年度、賃上げ表明しておきながらできなかった場合は、7点も減点されるということですから、来年度は特定・契約されることは超困難になるということになります。

出典:入札情報サービス(PPI)よりダウンロードした帳票に見え消し処理をして掲載

調査結果

 調査結果(5月15日段階)を下表に示します。

賃上げ表明した建設コンサルタント

 1業務ごとに確認したので、チェック漏れもあるかと思いますがご容赦ください。

まとめ

 調査した5月15日段階では、建設コンサルタントのほとんどが賃上げ表明を出していました。なかには、加点がされていない企業がありましたが、別の業務では加点されていたので、表明書の提出が間に合わなかった場合が想定されます。
 また、総合評価落札方式の業務の契約がまだで、情報が把握できていない企業も沢山あります。2か月に一度は、更新していければと思います。
 来年の今頃は、減点になっている企業があるか否か確認していきましょう。

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