建設コンサルタント業界は1兆円市場!成長する?

建設コンサルタント業界は1兆円産業 建設コンサルタントとは
建設コンサルタントは1兆円産業

 建設コンサルタントは成長産業なのでしょうか?これから働こうとしている大学生にとっては、建設コンサルタント業界を選択するか迷うテーマじゃないでしょうか。また、ゼネコンやメーカーに勤めている方が建設コンサルタントに転職しようと考えていた場合、将来どうなるのかなと不安ですよね。
 これまでの市場を見て考えていきたいと思います。

国土交通省統計から

 国土交通省が毎年調べている「建設関連業等の動態調査(50社)」という統計資料があります。50社の実績だけですので建設コンサルタント業界市場(2020年に3,956社登録されています)をすべて網羅しているわけではありませんが、市場が拡大しているのか減少しているのかは把握することができます。
 1998(平成10年)に506,773百万円発注されていたものが、2010年(平成22年)に27%減少して368,263百万円となりました。翌年の2011年(平成23年)度以降は東日本大震災の復旧事業や復興事業などで事業量が増えています。直近10年間の市場環境は非常に好景気に沸いていたということです。令和2年度には635,954百万円と2010年から73%増加しています。復興事業による業務量増大が影響しています。
 建設コンサルタント50社で6,000億円強の市場です。1社あたり120億円です。
 下図からもわかる通り、公共事業の増減が建設コンサルタント市場の拡大縮小の命運を握っていることになります。つまり、公共事業の引き締めがあると、途端に経営的に悲鳴を上げなければならない業界と云えるようです。

建設関連動態調査(建設コンサルタント50社)発注者別受注金額推移
出典:国土交通省「建設関連動態調査(建設コンサルタント50社)」は発注者別受注推移 

一般社団法人建設コンサルタンツ協会調べ

 一般社団法人建設コンサルタンツ協会(https://www.jcca.or.jp/)は、毎年協会活動成果として「年報」と「建設コンサルタント白書」を発行(pdf形式でダウンロードして読むことができます)しています。協会の会員数は496社(令和3年11月30日現在)です。すべての建設コンサルタント会社が入会されているわけではありませんが、大手から中堅クラスの建設コンサルタントはほとんど協会員になっています。(建設コンサルタンツ協同組合という中小規模の建設コンサルタント業者を組合員とする協同組合という組織もあります。)
 一般社団法人建設コンサルタンツ協会は、協会員に対して毎年受注状況などのアンケート調査を出し、整理を行い、その結果を建設コンサルタンツ白書としてまとめています。下図は、「令和3年度建設コンサルタント白書」の(資-3)を引用させていただいています。なお、建設コンサルタントの仕事や動向については、この資料を読めば把握することができます。
 国土交通省が集計している建設関連業等の動態調査(50社)と傾向は同じですが、集計母数が違うこともあり約1.6倍の市場となっています。

 この図を見ると平成9年に約1兆円あった市場が毎年縮小していって平成23年で6,000億円少しと約40%近く市場縮小したようです。その後、約8年間で令和元年に1兆円の大台まで回復しています。この増加率を維持したまま、引続き市場拡大する可能性は考えにくいです。
 建設コンサルタント500社程度で見ると1兆円の市場です。

出典」「令和3年度建設コンサルタント白書」建設コンサルタンツ協会HPより引用 資料ー1(https://www.jcca.or.jp/achievement/annual_report/white_reports_r03.html)

 建設投資額と建設コンサルタント部門売上高との関係を見るとほぼ比例しています。つまり、国の建設投資額を絞るという政策が出ると建設コンサルタントの市場規模も縮小していく可能性が高いようです。

今後の建設コンサルタントは大丈夫?

 今後の市場がどう動くか予想するには、勉強が足りません。
 なので、大手建設コンサルタントの有価証券報告書に記載されている受注リスクと差の対応策として今後のビジョンや中長期計画でどのように述べているのかを見ていきましょう

日本工営はこう考える

受注のリスク

 コンサルタント国内事業およびコンサルタント海外事業におきましては、国内の官公庁・地方公共団体からの受注およびわが国ODA(政府開発援助)予算に基づく案件の受注の割合(依存度)が高く、コンサルタント国内事業では公共投資の動向に、コンサルタント海外事業ではODA予算の動向影響を受ける傾向があります。
 電力エンジニアリング事業におきましては、東京電力パワーグリッド(株)に対する受注の割合(依存度)が高く、同社の電力設備投資等の動向に影響を受ける傾向があります。
(有価証券報告書より抜粋)

対応策

コンサルタント国内・海外
■ コンセッションやPPP/PFI事業等の民間事業
Non-ODA案件の受注拡大
■ BIM/CIM 等、IoTによる付加価値向上
電力エンジニアリング
● 官公庁、民間案件の受注のための設計・調達力・提案強化
(日本工営 総合報告書より抜粋)

公共投資に影響を受けるので、建設コンサルタント事業に近いコンセッションやPPP/PFI事業の民間事業に注力するぞ!ということでしょうか。

パシフィックコンサルタンツはこう考える

事業リスク 

 パシフィックコンサルタンツは上場していないので、有価証券報告書がありません。なので「グループビジョン2030」の文章から、事業リスクを拾ってみました。
 現代は、さまざまなリスクへの不安と、テクノロジーへの期待が入り混じる困難な時代に入っています。困難な時代だからこそインフラエンジニアリングを核としたコンサルティングサービスが求められる存在となり、社会の持続可能な発展に貢献できると信じています。

対応策

・共創パート
 社会から問われる課題に向き合うだけでなく、自ら社会に問いかけ、新たな価値創造の先頭に立ち、各界から共創パートナーとして信頼される存在となります。
・グローバル企業
 日々の課題から世界と向き合い、世界とともに解決を目指すグローバル企業となります。
・持続可能な世界
 建設コンサルタントの枠を越えた創造的思考と行動革新的テクノロジーの力で、人間と自然が共生する持続可能な世界へと導きます。

建設コンサルタントの枠を超越した考え方とITを使ってSDGsを実現します。という要約では間違っているかな。受注が減るとか属世間的な話はさておいて、社会の課題を解決していきます。ということでしょうか。

建設技術研究所はこう考える

受注のリスク

当社グループの受注は公共事業に大きく依存しており、その動向により当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(有価証券報告書より抜粋)

対応策

これらのリスクに対して、グループ会社間の連携を強化して、既存事業の競争力をさらに高めていくとともに事業領域の拡大に取り組み、受注確保に努めております。
(以上は有価証券報告書より抜粋)

1.国内事業拡大
(1)事業プロセス拡大
 インフラに関わる全事業プロセスを対象としたサービスを展開
(2)事業分野の拡大
 研究開発成果の実装や新たな技術部門の新設等により、さまざまな分野で事業を拡大
(3)市場の拡大
 国土交通省などの一次官庁からの受注を着実に伸ばすとともに、特に地方自治体(都道府県、市区町村)、民間市場へ事業を拡大
2.海外事業拡大
 発展途上国から先進国までを含めたグローバル展開を推進
(CTIグループ中長期ビジョン -SPRONG-より抜粋)

公共事業一辺倒ではリスクが大きいから、現状の事業を受注事業から一歩先のサービス事業へ展開する。今の国交省などの受注基盤はシェアを伸ばしつつ地方自治体に力を注ぐ。そして、民間市場へ事業を拡大する。と云っています。日本工営と同じ考えですね。

オリエンタルコンサルタンツはこう考える

受注のリスク

当社グループは、民間比率の向上に努めておりますが、国内外とも公共事業に係る業務が高い割合を占めており、公共事業の売上高は、下期に偏る季節変動特性を有しております。
(有価証券報告書より抜粋)

対応策

国内・海外において事業を展開し、“社会価値創造企業”の実現に向け、国・地域とのより高い信頼関係を築き、国・地域の活力や魅力を高める事業を推進
(有価証券報告書より抜粋)

1.事業の拡大や新たな価値の創出により、国内外における市場を拡大
従来の個別の受託・コンサル業務のみならず、総合事業や、自らの投資に基づき運営・管理する自主・事業経営を推進
地域特性やニーズなどを踏まえた固有の地域政策として提供する地域固有価値・新規価値を創出
2.事業の重点化により、ナンバーワン、オンリーワンを確立
5つの事業〈インフラ整備・保全(道路系)、インフラ整備・保全(水系)、防災、交通、地方創生〉を重点化事業
3.グループ連携により、事業の総合化、国内外市場の競争力強化
グループ内企業の連携により、総合事業として、事業の上流から下流までを実施する垂直統合および複数の事業の複合化を推進
4.海外市場の競争力強化
海外の国家的プロジェクトに総合力で貢献
5つの新規事業〈民間事業スマートシティ開発事業O&M事業DX事業事業投資〉を重点化事業
(中期経営計画)

 もうすでに民間比率を高めようとしているけれど、まだまだ公共事業に依存が高いので、自らの投資で運営・管理する事業展開を行っていく。海外では5つの新規事業を重点的に進めていく。と云っています。
 オリエンタルコンサルタンツは、すでに民間事業や自主事業を積極的に取り組んでいるイメージが強いです。そして積極的に地域の魅力向上・活性化に大きく貢献しているような強い印象があります。
 その中でも、神奈川県開成町の地域活性化の取り組みの一環として、慶応元年に創業した酒蔵の瀬戸酒造店を買収し、自家醸造を断念していたものを復活させて、事業経営を始めています。超高級な純米吟醸酒の販売(720ml 11,000円税込)も開始されています。一口でいいから試飲させてもらいたいものです。

応用地質はこう考える

受注のリスク

当社グループの各事業において、公共事業領域は依然として当社の主要市場の一つであり、国及び地方公共団体等は主要顧客になります。国及び地方公共団体等の財政状況の悪化や事業量の縮小に伴う発注量の減少、調達方式の変更、並びに不測の事態に伴う指名停止措置等により、当社グループの営業成績に影響を及ぼす可能性があります。
(有価証券報告書より抜粋)

対応策

当社は、公共事業に依存した従来型のビジネスモデルからの脱却を進めることで、そうしたリスクの抑制に努めています。
(有価証券報告書より抜粋)

公共事業依存したビジネスモデルから脱却していくことが明確に記載されていますね。

まとめ

● 建設コンサルタント業界市場は1兆円超
● 各社建設投資はこのまま伸びないので、現状市場のシェア拡大、民間事業への展開、海外進出強化
を積極的に考えているようです。

 これから建設コンサルタント業界を目指そうとしている方々には、土木の技術力を高めるのはもちろんですが、幅広い視点で技術力を高めていってもらいたいものです。

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