転職を考えている方にとっては、転職先がどのくらいの中途採用者を採用しているのか知りたいのではないかと思います。
募集要項には、若干名としか書いていない場合が多いようです。
転職先で肩身の狭い思いをするのではないかと不安を持っているかもしれません。
そこで、建設コンサルタント各社がどのくらいの比率で中途採用者を正規雇用されているか調べてみました。
法律で公表を義務化
企業が雇用する正規雇用労働者数に占める、中途入社の割合である「中途採用比率」を2021年4月1日以降、常時雇用する労働者が301人以上の企業を対象に、年に1回、中途採用比率を公表することが法律により義務づけられました。
条文は、下記より参照ください。
【労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則の一部を改正する省令】(pdfファイル)
制度の目的
本制度は、労働者の主体的なキャリア形成による職業生活のさらなる充実や再チャレンジが可能となるよう、中途採用に関する環境整備を推進することを目的としています。
各社がどのくらい中途採用しているか見える化することで、転職者の不安を解消しましょうということだと思います。
対象企業
対象となる企業は、常時時雇用する労働者数が301人以上の企業です。
建設コンサルタント業界では、中堅以上の会社が対象となります。
どうやって公表するか
求職者等が容易に閲覧できる方法であるインターネットなどで公表することされています。
つまり、中途採用の募集要項のホームページで公表しなさいと示されています。
具体的に日本工営(株)の例を下図に示します。
上表によれば、2021年6月期に100名の正規雇用労働者を採用したとしたら、中途採用比率が21%なので21名が中途採用者となります。
長期間同じ水準で中途採用者を採用したとしたら、従業員の2割以上が中途採用者と云うことになります。転職者も肩身の狭い職場と不安がらなくてもよいのではないでしょうか。
筆者は、転職を経験していないプロパー組でしたが、若いころに転職を考えたこともありました。でも、転職先で役立つのか肩身が狭いのではないかなど不安が大きく、勇気がなくて決断できず、居残り続けることになりました。それは、それで幸せなことでもありましたが、もし、あの時、転職していたらどんな人生だっただろうなどと思いますが、過ぎてしまったことを仮定で振返って悔やんでも仕方ないことです。
筆者の会社は、中途採用者を積極的に採用していました。私の部署では私が率先して中途採用を雇用担当していました。前職での経験を生かして最前線で活躍した人もいれば、面接時の言葉に騙されたという残念な方もいましたが、みんな積極的に業務に取り組んでいただいたおかげで、部内が活気づいたように思います。
筆者の所属していた会社では、転職してきた人の中には、執行役員や取締役まで昇進した方もいました。転職者だからプロパーだからといった処遇上の差別はありませんでした。しかし、残念なことに一部心無い職員がいたことも事実です。そんな人間は無視して過ごすことを期待します。でも、ここら辺のことは重要なことで、受け入れ側で環境整備しないといけないことですね。
公表していないと罰則はあるの?
中途採用比率公表の義務化は、現状では対象企業の努力義務とされています。そのため、未対応でも罰則の規定はありません。ただし今後、違反した企業に対して何らかの罰則規定が定められる可能性もあるようです。
建設コンサルタント各社の中途採用比率公表状況
建設コンサルタント各社のHPを見て下表にまとめてみました。(2022年3月調べ)
数値の発表日に対して、「直近年度」、「直近ー1」はその前期を示します。「直近ー2」はさらにその前期の数値となります。表中の「HPに記載が見当たらない」と云うのは、中途採用募集要項などに公表されていないということです。
日本工営(株)の20%台は低いくらいです。
中途採用比率の平均は40%です。
アジア航測(株)、(株)ティーネットジャパン、西日本高速道路エンジニアリング関西(株)が60%超の中途採用比率となっています。施工管理を主業としている(株)ティーネットジャパンでは70%以上という中途採用比率です。(株)ティーネットジャパンでは、募集要項の掲載ページではなく法令に基づく情報提供のページで公表されていました。募集者が、当該法令の存在を知っていたら知りえるかもしれないですが、通常はそのようなページまでたどり着くことは困難なのではないのでしょうか。
(株)建設技術研究所や(株)エイト日本技術開発などで公表されていないのがびっくりしました。
罰則がないとはいえ法律順守していないのはいかがなものかと思います。
業界ビック3の(株)建設技術研究所が公表していないのは不思議ですね。
関係者においては総務部に連絡してあげてください。
2022年6月19日に建設技術研究所のHPを閲覧したところ、下記のように記載がありましたので、見え消しで表現させていただきました。
正規雇用労働者の中途採用比率(2022年6月6日時点)
2019年度(2019年1月~2019年12月末) 34%
2020年度(2020年1月~2020年12月末) 43%
2021年度(2021年1月~2021年12月末) 27%
年によって結構ばらつきあるのですね。
最も良い公表例
もう一つ好感の持てる公表例として、(株)NJSの例を挙げます。
下記のように、年度内のの採用者数、新卒採用者数そして中途採用者数を具体的な数値として公表するとことは潔くて好感が持てます。
ぜひとも、建設コンサルタント各社がNJSのような公表を期待します。
まとめ
建設コンサルタントの中途採用比率平均は40%台です。
施工管理主体としている(株)ティーネットジャパンでは70%の中途採用比率が高い。
(株)建設技術研究所が公表していないのは法令順守違反です。
建設コンサルタント業界においても、人材の流動化が始まっているのではないでしょうか。調べてみると、建設コンサルタント業界も意外と中途採用比率が高いものだと思いました。
転職を考えている方々にとって、少し不安が拭えたら幸いです。
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